103日目:仲間との別れの日

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2016年11月29日(火)
朝目が覚めたら船はすでに横浜に入港していた。いつもならなかなか起きない同室のオノちゃんもこの日はさすがに早起きだった。

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そう8時過ぎには仲間たちはここ横浜港でピースボートから下船するのだから。

 

そしてオノちゃんと4階に最後の朝食を食べに行く。オノちゃんはいつものノリで元気いっぱいだった。同席の人といつものように陽気に話しかけていた。レストランではマルちゃんとエイコさんにも会った。二人ともいつものノリでもうすぐお別れという感じがしなかった。二人はいつも一緒に行動していたけれども今日でお別れなのに何だかそういう風には見えなかった。これだけ見ていたら今日で本当に最後と思ってしまうくらいいつもと同じ風景だった。でも仲間達との別れの時間はもうそこまで迫っていた。

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食事の後オノちゃんは最後の片づけをする。いつものリックを背負って、帽子をかぶって下船の時間を待つ。下船は上の階から順番に降りていくことになっていた。その為7階に船室があるオノちゃんが仲間では一番最初に降りることになっていた。二人で船内放送が入るのをじっと待つ。そして放送が流れた。予定よりかなり早い時間の下船となった。

 

私もオノちゃんの荷物を持って5階の下船口まで見送りをする。そして握手する。それだけだった。後は言葉も出ない。ただ手を振って別れた。こうして100日あまり一緒に生活してきた船友が去っていた。あっけなかった。でも涙が出た。

 

その後も部屋には帰らず他の仲間たちが全員下船するのを見送った。言葉をかけたくても声がまともに出ない。近づいて顔を見るだけで涙が出てくる。でも恥ずかしいから見られないように下を向く。無言で手を振る。握手だけでもと思いしっかり手を握る。私の出来ることはこれぐらいだった。あっという間に仲間達はいなくなった。一人一人確認して見送れた事が嬉しかった。みんな元気に去って行った。これで私のピースボートの旅も区切りが付いた。

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船にぽつっと自分だけが残ったような気分になった。後は部屋に閉じこもった。自然に涙が出た。何でこんなに悲しいのか分らないくらい涙が出た。仕方がないのでスマホを取り出して無意味にネット検索をして時間をつぶした。

 

昼食時間になったので部屋から出て、船内を少し歩いた。先程まであれほど沢山いた人が一瞬にして消えていた。横浜で降りる人の方が多いことは分っていたけれどもこれほど少なくなるとは思わなかった。当然レストランも私一人貸し切り状態だった。

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昼食後、船の出航時間になったのでデッキに出てみる。残った人数がわずかだったので、きっと寂しい出港式になると思っていたら、降りた人達がまた続々とピースボートの周りに集まって来て出港を見送ってくれている。その数は100人以上いた。なんだか嬉しかった。そしてすごく涙が出た。

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私はピースボートが嫌いだ。でも乗っていた人達は好きだ。人間味があふれる人が多くいた。それだけでも今回乗った価値があったと思う。

正直言って、もう二度とピースボートには乗らないと思うけど、人との出会いは本当に大事だ。一期一会とはこんなに素晴らしいものだと言う事を今回の船旅は教えてくれた。

 

船が出航した後も船室には戻らずしばらく、ずっと横浜の港を見続けていた。これで最後ではない仲間とはまた会う約束もしたし、連絡先も交換した。これからも良い仲間としてつきあっていけると思う。でも今は寂しさでいっぱいだった。そして海を見ながら今回の旅の思い出を一つ一つ頭の中で繰り返していた。

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それから部屋に戻って一人ぽつりと部屋にいた。またスマホをさわって特に目的もなく何かを検索して夕食までの時間をつぶしていた。

それ以外にあったことはピースボートのスタッフが私の荷物の確認しに来て、それを運び出してくれたことだけだった。

それ以外のことは何も起らなかった。まるで時間が止まったように何もなかった。

 

夕食はいつもの4階で食べるつもりでいたけれど、何だか他の人と同席になるのがおっくうだった。それで9階の軽食ですますことにした。ここも普段なら若い人達でいっぱいだったけれどもこの日はほとんど人がいなかった。食事を取りながらいつもなら仲間と話をするのだけど、今日は誰も話す相手がいないのでただボーとしてデッキの風景を見ていた。薄暗い夕日の中一人ぽつりといることが妙に侘しく思えてきた。

 

その後、波へいに行って一人で酒盛りをするつもりだったけど、そんな元気も全くなくなってしまったので、部屋に戻ることにした。

部屋に戻って暗い海を見ながら、何をするわけでもなく時間が経つのを待った。

 

こんな寂しい時間はこの旅で初めての経験だった。いつも周りに誰かがいて私の相手になってくれていた。そして楽しい時間を過ごさせてくれた。でも今は誰もいなかった。

心底寂しいという気持ちが湧き出てきて、ベッドに入った。まだ寝る時間には早かったけれどもこれ以上起きている自信がなかった。

 

しかたがないので病院でもらった睡眠導入剤を飲んで寝ることにする。夢の中だけでも元気な自分でいられたら良いと思った。

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