104日目:ピースボートを降りた日

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2016年11月30日(水)
朝起きるのがかなり辛い。昨日は9階で軽く夕食をしたあとは、一人で酒を飲んでも楽しくないし、話し相手もいないし、テレビも見る気もしないので結局早く寝た。

あまりにも早く寝たので、睡眠導入剤まで飲んで熟睡するつもりだったのに、なんだか眠りが凄く浅く変な夢ばかり見て、あまり寝られなかった。

周りの環境が急激に変わったのか、単なる人寂しさなのか分らないけれども、気分がかなり鬱になってしまったようだ。

 

それでも朝ごはんを食べなきゃという気持ちでベッドから起き上がり部屋を出た。

昨日まで賑やかだった船内が急に息を殺したように静かになっている。廊下にも人影さえ見えない。

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いつもいっぱいだった9階のレストランも数えるほどしか人がいない。厨房係のクルーも暇をもてあましているようだ。

今までだったらのんびりと食事が出来ると喜んでいるところだけど、この日ほど人が恋しいと思ったことはなかった。

食事をしても、本当に味気ない。食事は意外と賑やかな方が美味しいと思い知らされた。

 

部屋に戻るとオノちゃんの寝ていたベッドがきれいに片付いていた。殺風景な部屋なのに余計寂しく感じる。なんだか早く船から出て行けと催促されているのかなとちょっと被害妄想的な気持ちになってしまった。

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それからは一度パスポートを受け取りに行った以外は、部屋を出ることもなく部屋でひたすらスマホを操作する。幸い船が日本沿岸を航行してくれていたので、スマホの電波が受信できたのだ。こういう時は日本国内でよかった思う。何かと繋がっていないと本当に心が寂しいという感じがする。

 

それから昼食を食べにまた9階に行く。昨日仲間と別れてから一度も4階のレストランに行っていない。本来なら4階の方が人も多く集まり少しは賑やかで話し相手になってくれる人もいるはずなのだろうけれども、人恋しい気分があるくせに何故か今は仲間だった人達以外とはあまりおしゃべりをしたいという気持ちが失せていた。結局昼食も軽く食べて、まるで逃げるように部屋に戻った。最後の食事はあじフライバーガーだった。

部屋に戻ると手荷物をまとめて持ってきたスーツケースに詰めた。これでいつでも降りられると思った。そして長かった旅の終わりだと自分に言い聞かせた。

降りる準備ができたところで急に最後にもう一度だけ船内を探索したくなって歩き回る。もうすぐ自分の家に帰れるという嬉しさがある反面、なんだかピースボートから降りるのがすごく寂しいという気分にもなっている自分に不思議な感覚を持つ。誰もいない船の中を歩いて写真を撮った。これが自分が苦楽をともにした船だという証だという気持ちで撮った。でもその姿はもの悲しかった。

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船を探索をしていると何人かの知り合いに会い、最後の別れの挨拶をした。これで本当にいよいよ降りる時が近づいてきたんだなと実感した。
それからは部屋に戻らずにデッキに出て海を眺めて、神戸港に近づくのを見ていた。

104日間の間飽きるほど見た海なのにまだまだ見たらなかったという気持ちになっていた。

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午後2時に船は予定通り神戸港に着いた。同時にスマホで奥さんに電話をした。すでに港に車で迎えに来てくれていた。

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港に着いてからまず荷物を下ろす作業があるために、すぐには下船は出来なかった。仕方がなく船内放送でアナウンスがあるまで静かに自分の部屋で待った。そして窓から見える港の風景をぼんやり眺めながら奥さんにまた電話をする。そうやって時間をつぶしていた。

 

それから30分ほどして下船許可が降りたことが放送された。あとは荷物を持って急いで5階レセプション前の下船口に急いだ。そして船を降りる。途中で何人もの見送ってくれるクルーとピースボートスタッフ一人一人にありがとうと、楽しかったという言葉を言っていた。

確かに不満が多い旅だった。決してピースボートは褒める事が出来るクルーズ船とは思えなかった。でも降りる時には心からクルーにもピースボートのスタッフにも感謝したかった。これも紛れもない真実だった。

この104日間、結構きつかった。何度も帰りたい気分にもなった。そして何度も不満が爆発した。こんな船に二度と乗るものかと何度も思った。そのたびに仲間や多くの人に励まされ元気づけてもらって、この長い旅を無事に終わることが出来た。そこには全ての人に感謝という気持ちしかなかった。こんなに素直な気持ちになれたのも、この旅のおかげかもしれない。

 

船を降りて、港で入国審査を受け、昨日出した自分の荷物をカートに積み駐車場に向かった。そこには奥さんが迎えに来てくれていた。

 

これでうちに帰れる。これでピースボートの旅も終わった。長かったけれども自分の人生の中で一生消えない思い出にもなった。辛かったけれども結局ピースボートに乗って本当に良かったと思っていた。

 

車に乗り込み、家に向かって走り始めた。何となく安堵感を感じているのに、何故か涙がこぼれた。

104日間の船旅の事。仲間のこと。そしてピースボートや世界中で会った多くの人のことはずっと私の心に残る事だろう。

 

さて早く家に帰って愛犬に私の元気な顔を見せてあげなければ。

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